『笑う山崎』


笑う山崎 (ノン・ポシェット)

笑う山崎 (ノン・ポシェット)

花村萬月芥川賞を受賞したことほど、純文学とエンターテインメントの境界が曖昧になったことを示す好例は無いかもしれません。純文学系の作家を文壇に送り出すと一般に目される芥川賞ですが、花村萬月は現在エンターテインメント作家として認識されています。
『笑う山崎』は目下花村萬月の傑作と言われる作品です。サディスティックなヤクザの山崎が、その周囲で起こる様々な出来事を通じてその複雑な人間性を露出させていくという仕立てになっています。
実に不思議な魅力を提示する主人公の山崎。そして、その山崎と子分たちが織りなす虚構のファミリー、作中で「疑似家族」と表現される彼らの絆は、人間関係の核心を示唆しているかのようで大変興味深いです。