『くっすん大黒』


くっすん大黒 (文春文庫)

くっすん大黒 (文春文庫)

パンク作家として登場し、瞬く間にその地位を確固たるものにした町田康。そのデビュー作が『くっすん大黒』です。近世江戸時代の話芸を彷彿とさせる文体と、ユーモアを現代に復活させた点が革新的とみなされました。確かに過去にもこうしたタッチの作品はエッセーの世界などでは見られたのですが、ある程度の文学性を成立させるところに町田康の、作家としてのアドバンテージがあると言えるでしょう。
働くのが嫌になって酒ばかり飲んでいたら妻が家を出ていき、誰もいない部屋の中を見渡したところ、金属製の大黒が目について不愉快だったので捨てに行く、というストーリーです。なにげに、一緒に文庫本に載っているもう一つの作品、『河原のアバラ』のほうこそ名作だと言う人もいるみたいです。