『キッチン』


キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

あまりに有名です。紹介するのもはばかられる作品です。吉本ばななは『キッチン』でデビューしました。九〇年代初頭にデビューした作家は吉本ばなな以外にも辻仁成などが挙げられます。現在文壇を牽引している実力派の中堅作家が九〇年代に多く登場していることから、いずれ九〇年代という時代に何かしらの名称が与えられることでしょう。ポストW村上と目される時代です。
『キッチン』は一風変わった共同生活を営むことになった若い男女の話です。恋愛のような恋愛でないような生活の中で、家族愛のようなそうでないようなものを育んでゆきます。「みかげさんは恋人としての責任を全部のがれてる。恋愛の楽しいところだけを、楽して味わって、だから田辺くんはとても中途半端な人になっちゃうんです(以下省略)」なんてセリフから、主人公みかげと田辺の曖昧な関係を推して知るべし。
とても美しい文章で描かれています。読みやすいので、これから小説を読み始める、という人に最適と思われます。
他に紹介したい作品に『とかげ』などが挙げられます。