『ジョン・レノン対火星人』


ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

タイトルと内容の関連性は希薄です。
日本におけるポストモダン文学のはしりと目される高橋源一郎。その本当の意味での「デビュー作」が本作です。一見して読者を困惑させる文章を書きますが、しばしば高橋源一郎の作品は現実の世界で起こるなんらかの事件や出来事を、巧妙なメタファーとして描きだす手法を採ります。必ずしもそういう読みが正確かどうかは分かりませんが、一つご参考までに。
ポルノ作家の主人公が、東京拘置所から出所してきた「死躰のことしか考えられない人」の身柄を引き受けて更生させる、という話です。個人的には第一章、「すばらしい日本の戦争」がイチオシです。グロ死躰描写の手紙を冷静に添削するシーンは、何度読んでもため息が洩れるぐらい面白い。また、内田樹の解説は一読に値します。
参考までに高橋源一郎の初期作品、『さようなら、ギャングたち』は、吉本隆明をして「現在までのところポップ文学の最高の作品だと思う。村上春樹があり糸井重里があり村上龍があり、それ以前には筒井康隆があり栗本薫がありというような優れた達成が無意識に踏まえられてはじめて出てきたものだ」と言わしめています。