『塩狩峠』


塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠とはどこか。旭川のやや北、天塩と石狩の中ほどに位置する場所に、その尾根があります。この塩狩峠は文字通り分水嶺となっていて、南方は石狩川水系へ、北方は天塩川水系へと注ぎます。参考URLhttp://midori-church.tripod.com/shiokari/
本作はキリスト教信者の青年の、短い生涯を描いた作品です。
著者独自のキリスト教解釈を、明治期の清貧な人々の暮らしに織り交ぜて描き出しています。
この作品の白眉たる箇所は、なんと言っても主人公永野信夫がその身を犠牲にして暴走列車を停止させるシーンです。己の信仰心が自らの生命をも優越した姿は、涙なくして読めない場面です。
この永野という青年の生き方は、まさにキリスト教の信仰そのものでもあり、そして私欲を超克し得ない人間存在の弱さでもあります。
三浦綾子の金字塔として、発表から実に四十年近く経過した今も読み継がれています。