『物語が、始まる』


物語が、始まる (中公文庫)

物語が、始まる (中公文庫)


短編集を紹介するのは初です。
僕はけっこう短編集を好んで買います。特に初めて読む作家の場合、長編を読んで大して面白くなかったりしたらがっかりするので、試しに短編から読むことが多いように思います。
川上弘美の『物語が、始まる』は短編集の中でもかなりオススメできる代物で、個人的には隠れた名作だと思っています。『センセイの鞄』で長編を書く作家へと発展を遂げた著者ですが、その本領たる短編をぜひおすすめしたい。
公園で「雛形」を拾う。その「雛形」は人間の男性の雛形で、育てれば一通りの人間らしく振る舞うという。三郎と名付けられたその雛形は様々なことを学習し、拾い主と奇妙な同居生活を始める。しかし、雛形はあっという間に歳をとる。
そんなお話です。この短い話の中になんと哀しいものが詰まっていることか。