『芽むしり仔撃ち』


芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)


大江健三郎はまあ、死んだら間違いなく川端康成とか三島由紀夫と同列に扱われるんでしょう。ノーベル賞も取ってるし。
本作『芽むしり仔撃ち』は、戦時下の少年院が集団疎開を決行した、という設定から物語が始まります。敵意を剥き出しにする疎開先の村人たち、村で万延する疫病、少年達だけが残った村、そこに建設される「自由の王国」、そして、村人たちの帰還によって崩壊する自由。綿密な舞台設定から紡ぎ出される人間の躍動感や、それに伴う生きることの「グロさ」などが、冷酷な描写によって鮮やかに描かれています。ただ、使い古された素材で物語をやり繰りしている印象はぬぐえないなぁというのが、僕の正直な感想です。人によってはその設定を陳腐と思うのかもしれません。
一応、大江健三郎の最高傑作との呼び声が高いそうなので紹介してみました。ちょっと、大江健三郎を読んだ経験が浅いせいか、僕自身この作品の価値を捉えきれていないように感じられます。手に余るのでどなたか上級者の方、読んで味わってみてください。