サヨナライツカ


サヨナライツカ (幻冬舎文庫)

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)


これでもかってぐらい王道を行く恋愛小説です。確かに構図そのものは定式化されたものだし、陳腐と言えなくもない。けれど明快な手法に支えられたこの作品は、大変しっかりした構成で描かれていて、読んでいて安心感があります。
筋としては、結婚を控えて火遊びをしたものの、段々遊びじゃ済まなくなってきた、というような感じでしょうか。二人の間の駆け引きが面白い。200ページほどの作品ですが、もっと分量を多く書いてほしかったかも。
個人的には、貪るようにお互いを求め合った二〇代の話よりも、時を隔てて再会した第二部以降のほうが感銘を受けました。肉体的な交渉が無いかわりに互いの心に通うものが、時間の経過を経てより洗練されているように感じられたのです。宮本輝の『錦繍』を彷彿とさせました。
たまにはこういった、読んでいて恥ずかしくなるような恋愛小説も楽しいですね。




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