天平の甍

天平の甍 (新潮文庫)

天平の甍 (新潮文庫)



鑑真渡来にまつわる仏教徒らの苦難の日々をつづった小説です。
とにかく背景となる歴史事実の量に圧倒されます。ちょっとやそっと調べたぐらいでは到底書ける代物ではありません。井上靖の歴史家としての力量が示された、と言うべきでしょうか。クールな筆致もいい。絶妙な晦渋さが味になっています。
鑑真の渡来といえば海難ですが、ここにもちょっとしたドラマが用意されています。業行という僧が、数十年かけて写経し続けたその集大成が船で運ばれるのですが、それが海に次々と沈んでゆく。その時の業行の悲痛な叫び。井上靖好きにはたまりません。


私信ですが、しばらくパソコンの前を離れます。